白内障
白内障手術について
白内障とは
白内障とは眼の中にある水晶体(英語でlens:レンズ)という部分に曇りが生じる疾患です。
水晶体はもともと目の中に備わっている眼鏡(光の屈折装置)に相当する部分であり、そこに曇りが生じると、視界がかすみ、視力低下が生じます。また、まぶしい、眼鏡が合わなくなるなどの変化も起こります。
白内障は、加齢による生じることが多く進行性のものですので、生活に不自由な部分が出てきた場合には(車の運転がしづらい、いままで見えていた文字やテレビが見にくいなど)、手術による人工水晶体(眼内レンズ)への交換を検討します。
白内障治療
手術による眼内レンズへの交換を行います。
具体的には、眼の洗浄、消毒を行ったうえで、点眼麻酔を十分に効かせたうえで
- 1 角膜の端の方(強膜との境い目付近)に、2ミリ強の混濁水晶体の取り出し口を作成します。
- 2 水晶体の周りにある皮(水晶体嚢とよばれています)の前面に、丸い穴をあけます。
- 3 超音波乳化吸引装置を用いて、水晶体嚢の中身を削りながら、破砕しながら除去していきます。また、水晶体嚢に付着した、残りカス(水晶体皮質部分)も専用の吸引装置で除去します。
- 4 残った、きれいな水晶体嚢の中に、きれいな眼内レンズを取り付け、眼内の洗浄を行い終了します。
の4ステップで行います。
ゆっくりとした丁寧な手術を心掛けておりますが、それでも通常症例であれば10-15分程度で行える、負担の少ない手術になっています。
眼内レンズが眼内に入っている様子
手術のリスク、合併症について
現在白内障手術は、日本全国で年間100万件以上施行されており、医療機器の進化により、通常症例であれば手術による治療が行えます。
それでも、白内障手術全体では、軽度のものから重度のものまで含めて1-2%程度の合併症が生じており、とくに、進行した白内障(著しい視力低下が生じている状態など)では手術のリスクが高まりまので、適切な時期での手術治療をお勧めします。
眼の中の組織が弱い、眼の中のスペースが狭い、水晶体の核が非常に硬くなっている、あるいは膨大している、白色白内障、融解白内障 などの症例は、難治白内障とわれており、難しい手術(水晶体摘出、硝子体切除術、眼内レンズ縫着術など)や複数回の手術が必要な場合があります。
また、水晶体嚢破損、水晶体落下、硝子体脱出、網膜剥離、続発緑内障、眼内レンズ挿入不可、眼内レンズ偏位・落下、眼内レンズ度数ずれ、水疱性角膜症、眼内感染症、急性脈絡膜破綻出血、ショック 等の合併症により追加手術が必要となったり、著しい視力障害、失明が生じる危険性もあります。
そのような合併症を極力避けるためには、手術前に行う説明と注意事項をよく守り、医療者側との信頼関係のものと治療に取り組む必要があります。
患者様自身が病気と戦っていこうという積極的な治療意思とご協力がないと、手術の成功確率は著しく低下しますので、共に治療を頑張りましょう。
眼内レンズについて
通常の眼内レンズは単焦点レンズといわれ、焦点の合う位置が1カ所に固定されています。
例えば、遠くが見える眼内レンズを選択した場合には、運転時やテレビを見るときなど、遠くについては裸眼で(眼鏡をかけないでも)見やすいということになりますが、その反面、本を読む、スマホを見るなど手元を見る場合には老眼鏡の使用が必要になります。
逆に、近くが見える眼内レンズを選択した場合には、本を読む、スマホを見るなど手元を見る場合には裸眼で見やすいということになりますが、その反面、運転時やテレビを見るときなどは、眼鏡が必要です。
中間距離が見える眼内レンズを使用した場合には、パソコンなどの中間距離については眼鏡が不要で、裸眼で運転は無理にしても、中間距離のテレビを見るときや近くのものも少し離してみるようにすれば、概ね裸眼で不自由なく生活全般を過ごすことができます。
(もっとも遠用眼内レンズ、近用眼内レンズ、中間用眼内レンズのいずれを使用しても、強い乱視がある方は、乱視用眼内レンズを使用しても十分に補正できない可能性があり、遠用・近用ともに眼鏡使用が必要となります。)
これは、正常水晶体(若いころの水晶体)と違って、眼内レンズは水晶体部分を動かして自力でピントを変える力(=調節力)は無いために、しっかり見える位置が1カ所に固定されてしまうからです。白内障手術により、老眼(=調節力低下)が治るわけではありませんので、ご留意ください。むしろ眼内レンズ(単焦点レンズ)に取り換えることは、完全な老眼にすることになることをご承知ください。ただ、焦点の合う位置をどこに持ってくるかは今までの目の状態(近視や遠視の程度)と関係なく、ご自身のライフスタイルに合わせて自由に選択(※)することはできます。
とくに、白内障手術により屈折状態を変えることができるので、今まで近視が強いため分厚い眼鏡をかけないといけなかった方でも、白内障手術後は眼鏡なしで運転できるようになったり、本が適切な位置で読めるようになる可能性もあり、白内障手術のメリットを大きく享受出来ますので、早めの手術を受けておくと、人生をより快適に過ごすことができます。
(※)反対眼とのバランスや、眼底の状態等により、設定度数をこちらで一方にお勧めする場合はあります。
白内障手術を受ける時期について
- ・基本的には視力低下を自覚し、運転や読書など生活の中での不自由さを感じたり、生活上でのストレスが生じるようになったら検討していただくでよいと考えています。
- ・余り先延ばしにせず、手術を受けるほうが、今後の生活の質が向上します。(重症化した場合、通常の小切開での手術が行えないため)
白内障は進行性の病気であり、点眼治療で進行を遅らせようと手術を先延ばしにすることは、ご本人の人生の快適さや、白内障が進行していくことに伴う様々なリスク(途中失明や、視力低下による転倒、骨折のリスク、交通事故のリスク、認知症進行のリスク)等を考えますと、お勧めできません。 - ・眼底疾患、緑内障、狭隅角・閉塞隅角 の合併等がある場合には、その治療をするために白内障手術を必要とする場合があります。その時点での視力が良くても、中途失明を防ぐというトータルでの眼のマネージメントの為、こちらから白内障手術を勧める場合があります。
- ・屈折異常が強い場合には、屈折改善をする目的で早めの手術をお勧めします。裸眼視力が格段に良好になるため、ほとんどの方で生活が快適になります。
(単焦点眼内レンズを使用する場合、調節力が失われるので、調節力の残っている若年の方の場合には大きなデメリットもあります。メリット・デメリットをよく理解して、手術するかをご検討ください。)
通常白内障手術の費用の目安(自己負担金)
1割 2万円程度
2割 4万円程度
3割 6万円程度
手術内容、術中に使用する薬剤により変化することがあります。